今回お話を伺ったのは、不動産や相続のテーマを専門としているライターの “土岐さくらさん”(以下、土岐さん) です。司法書士事務所で働いたキャリアを活かし、法務に関する専門性の高い記事を執筆しています。SEO記事から取材案件まで幅広い分野で活躍し、現在ではクライアントからの継続的な執筆依頼で安定的に収益を得ているそうです。
しかし、そんな土岐さんも2023年ごろは不動産メディアの低迷で仕事がなくなり、苦しい時期を過ごしていたとのこと。とにかく収入を確保するために、暗号資産からギフトの紹介記事まであらゆるテーマの記事を経験したそうです。そのようなつらい局面であっても、実績を組み重ねて積極的にアピールしたところ、徐々に相続や債務整理に関する案件が舞い込むようになりました。
オファーをもらうための秘訣について、「ポートフォリオの見直しや細かな心づかいが大切」と土岐さんは語ります。一体、どのようにして相続と債務整理に特化したライターとしてのポジションを確立したのでしょうか。これまでのキャリアを振り返りながら、依頼が舞い込む仕事術について教えていただきました。
インタビュアーは “中村昌弘さん” です。興味のあるかたはぜひ最後までご覧ください。
目次
前職のキャリアを活かして、相続や不動産に特化
土岐さん、よろしくお願いします。最初に自己紹介をお願いします。
専業ライターの土岐さくらです。2022年6月からライター業に挑戦し、現在3年目を迎えました。
相続や債務整理、不動産のジャンルに特化して、SEO記事から取材まで幅広く手掛けています。士業関係の記事を専門にしている理由は、司法書士事務所でパラリーガル※として働いたキャリアを活かせると思ったからです。
※弁護士のサポートをするスタッフ
ライターに転身した当初から士業関係のテーマのみを扱っていたのですか?
初心者のころは方向性が定まらず、幅広いテーマについて執筆していました。ライターになって最初に取り組んだのは占いの体験記で、その後もさまざまな分野の案件に応募しました。
しかし、私の書く文章は公文書のように形式的だったため、ライフスタイルを扱うようなWebメディアとの相性が悪かったようです。なかなか評価されずに行き詰まってしまい、苦しい期間が続きました。
何がきっかけで、士業関係に特化しようと思ったのですか?
Webライターラボで開催されていた添削会※がきっかけです。2022年の年末、添削を受けたくて不動産の税制に関する記事を書いて応募しました。
この添削会の場で、中村さんから「司法書士事務所に勤務した経験が強みになるのではないか」とフィードバックをいただき、相続と債務整理のジャンルに特化しようと決意しました。今では、元パラリーガルライターと名乗っています。
※添削会:自分の記事に対してみんなの前で講師からアドバイスをもらえる講義
執筆先のメディアが閉鎖し、さまざまなテーマに挑戦
相続や債務整理のジャンルに特化してからは、順調にスケールアップできましたか?
いつも右肩上がりだったわけではありません。特に2023年の年頭はクラウドソーシング経由で引き受けていた執筆先のメディアが2つとも閉鎖してしまい、仕事がなくなってしまいました。
とにかく目の前の案件に取り組もうと、暗号資産からギフト紹介の記事まであらゆるテーマに手を広げました。収入を維持するために、SEO記事だけでなくディレクションやプレスリリースの執筆にも挑戦したほどです。この期間はかなり迷走しましたね。
ディレクションを経験してみて、どのように感じましたか?
私の性格には合いませんでした。どの程度まで修正すべきか悩んでしまう上に、管理職のような業務を続けると精神的に疲れてしまったんですよ。クライアントとライターの双方に気配りしつつプロジェクト全体を管理する必要があるため、ライターとは異なる能力が求められると実感しました。
さまざまなテーマの記事を書いて迷走したなかで、どのように状況を打開したのでしょうか?
大きく変えた点は2つあります。まず、クラウドソーシングだけに依存してはいけないと危機感を覚えたため、
直接契約の仕事を増やしてクライアントの幅を広げました。
このときに活用したのが、Webライターラボのメンバーがライターを募る「お仕事募集部屋」です。住宅などをテーマとした案件を探して継続的に応募した結果、6件ほど案件をいただきました。これにより2023年前半には直接契約の比率が6割を超え、取引先が分散して収入が安定するようになりましたね。
次に取り組んだのが、資格の取得です。仕事を得るにはライターとしての権威性や専門性を高める必要があると考えたため、FP(ファイナンシャルプランナー)2級を取得しました。この資格をSNSやポートフォリオに掲載したところ、営業せずとも仕事の依頼が舞い込むようになったのです。同時に、金融のアドバイザーとしてライター名を記事に掲載できる機会も増えてきました。
この2点の取り組みによって案件が徐々に増えていき、収入が安定しました。この時期に出会ったクライアントとは長期的な関係性を築いており、現在でも継続して仕事をいただいています。
継続的に案件を依頼される秘訣は、どこにあると思いますか?
恥ずかしながら、クライアントから評価いただくのは「返信が早くて仕事が丁寧」という点です。仕事中にチャットが届いた場合は早ければ5分ほどで返信しますし、稼働していない時間帯であっても3時間ほどでレスポンスしているからだと思います。
また、記事を書く際は誤字や脱字がないように何度も見返していますね。たとえば、翌日にもう一度読み直してみたり、紙に印刷してチェックしたりしています。ほかには内部リンクを設置するなど、細かな気配りも大切です。ディレクターとして働いた経験があるからこそ、このような発注者目線の仕事ができるようになったのだと実感しています。
在宅で働きたいとの思いから、ライターに挑戦
そもそもの話になるのですが、ライターになる前は、どのような仕事をしていたのですか?
新卒で入社したのは着物屋で、販売員として振袖や呉服を売っていました。しかし、状況を一変させた出来事が新型コロナウイルスの流行です。売上不振で閉店を余儀なくされたため、次の就職先を探すことになりました。そのときに興味を抱いたのが、司法書士事務所での仕事です。
着物屋とは畑違いの司法書士事務所に関心を持ったのは、なぜですか?
大学で法学を学んでいたため、着物屋で働きながらもいつかは法律系の仕事に携わりたいとの思いがあったからです。
加えて、着物屋の仕事で年上の方々を接客してきた経験が、自分の強みになるのではないかと思いました。司法書士事務所では相続の手続きができるため、ご年配の方がよく相談に来られます。だから、そこで働けば法務に接しながら強みをいかせるだろうと考え、さっそく求人に応募したところ、司法書士事務所に転職できました。
私が担当したのは、司法書士や弁護士のサポート業務です。相続不動産の登記申請や遺言書の作成といった仕事のほかに、士業事務としてお客様と接する場面もありましたね。転職時に思い描いていた通り、ご年配のお客様と良好な関係を築けました。電話のやりとりで名前をしっかりと覚えていただいていたほどです。
ところが、片道1.5時間の電車通勤によって疲れ果ててしまったり、職場の人間関係によるストレスがとても強かったりしたので、次第に退職を考えるようになりました。次の道をどうするか決めかねていたのですが、限界を迎えてしまい、次の転職先を決める前に辞表を提出したほどです。
次の職場を探すなかで、どのような手段でライターという仕事の存在を知りましたか?
転職活動中にInstagramを通じて知りました。
司法書士事務所で精神的に参ってしまったため、在宅で勤務したいとの思いがありました。そこでInstagramを通じて在宅ワークに関する情報を探していたところ、偶然目にしたのが
ゆらりさんのアカウントです。クラウドソーシングの活用方法などの基礎的な知識を学んで実践してみた結果、
最初の案件で3,000円の報酬を得られました。1記事を書いて3,000円が得られたので、執筆の本数を増やせば生活費が稼げるかもしれないと希望が生まれ、思い切ってライターへの転身を決意しました。
最初は自分の決断に自信が持てなかったものの、ライターへの挑戦を正しい選択にするべく気合と根性で取り組みましたね。
小さな実績をつくり、積極的にアピールする
ディレクションやプレスリリースの執筆など、これまでにさまざまな仕事を経験できた要因はどこにありますか?
既存クライアントからの依頼を断らずに引き受けた点が要因です。頼まれたことなら、たとえ未経験の案件であっても積極的に請け負っていました。その結果として、予想外に仕事の幅が広がったのだと思います。
しかし最近は、業務の範囲を少し広げすぎたと反省しています。自分のキャリアプランを実現するために、受け身の姿勢ではなく主体的に営業する方針へと切り替えました。
Webライターラボ内で開講された東本隼之さんの営業講座です。私はクライアントからオファーをいただく機会が多かったため、自分から営業をした経験がそれほどありませんでした。提案力の弱さが課題だと感じていたため、東本さんが講座を開講すると知ったとき思い切って申し込みました。
営業講座で教わった内容を実践したところ、インタビュー記事の案件が獲得できるようになり、今では収入の4割ほどを占めています。
インタビュー案件のように未経験の分野で新たな仕事を獲得する際は、どのように営業活動をしていますか?
まずは小さな実績をつくり、営業先に提案文を送っていました。私がはじめて取材案件に挑戦しようと思ったとき、最初に取り組んだのがWebライターラボでつながった仲間との相互インタビューです。練習目的でお互いに取材して記事を作成し、これを実績としてインタビュー案件の求人に応募していました。
相互インタビューで作成した記事:
本業と副業を両立させる秘訣は「成果が目に見える」こと。2年間副業を続けるヨシキさんに聞いた
求人情報を見つける方法は主にGoogle検索です。「取材ライター募集」や「インタビューライター募集」といったキーワードで探すと、Indeedや求人ボックスなどの求人情報サイトにたどり着きます。取材記事の場合、最初の1、2件は自分から仕事に応募していましたが、次第にクライアント側からオファーを受ける機会が増えてきました。
どのような経路でオファーを受け取る場合が多いですか?
SNSやクラウドソーシング経由が多いです。相手から声をかけてもらう上で、ポートフォリオにおける見せ方の工夫が大切です。私は、これから増やしていきたいジャンルの見本記事をポートフォリオ上段の目立つ場所に配置しています。私自身がディレクターとしてライターを採用した経験があるため、このような発注者からの見え方に気をつかうようになりました。
また、定期的な情報更新も欠かせません。実績が増えたときはそのたびに見本記事を追加していますし、2ヶ月に1回のペースでポートフォリオ全体を見直しています。
クライアントの利益を最大化することが目標です。そのために、過去にもらったフィードバックを振り返って、日頃から自分のスキルを磨いています。最近では取材でカメラを使う機会も増えてきたため、写真撮影の練習もはじめました。
売上を伸ばすだけでなく、ディレクターの負担を減らして発注者に貢献できるライターとなるために努力を続けていきます。
土岐さくらさん、ありがとうございました。お話できて楽しかったです。
◆さいごに
オンラインコミュニティ「Webライターラボ」は、今回お話を伺った ”土岐さくらさん” をはじめ、さまざまな分野で活躍するライターが集まっています。
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ゲスト:土岐さくら(@toki_sakura_09)
インタビュアー:中村昌弘(@freelance_naka)
ライター:福士智大(@dampernagano)
編集:ゆらり(@yurarigurashi)