はじめに
Webライター向けオンラインコミュニティ「Webライターラボ」では、所属しているメンバーがコラムを書く企画があります。
今回紹介するのは、運営統括の “大江かこ” さんの連載コラムです。
イベントでの気づき「何がしたいのか分からない人は、自分を知らなさすぎる」
「AI時代のライター生存戦略会議〜押さえておきたいトレンドとnote活用法〜」がテーマのMarbleコミュニティ主催のイベントに出席しました。
その中で最も印象に残った話は、ライターのキャリアについて、いしかわゆきさんが仰っていた「何がしたいのか分からない人は、自分を知らなさすぎる」という話でした。いしかわゆきさんはライターであり、作家として『書く習慣』などの書籍を出版されている方です。自分を知るために、感情が動いた瞬間を深掘りすると話してくれました。
たとえば同じ映画を見た人が、全員同じ場所で喜怒哀楽を感じるわけではありません。感情には個性が出るので、「どこで涙を流すか?」は人によって違います。そのため「なぜそのシーンで喜怒哀楽を感じたのか?」という理由を深掘りして考えると、自分の知らなかった個性が見えてくるのだそう。個性が見えれば、そこから「自分は何がしたいのか?」を考えやすくなりそうだと感じました。
私は今まで「何をしたいのか分らないから、目の前のことを一生懸命やろう」と考えていました。もちろん、その考えも大切ですが、「何がしたいのか分からない」という感情から、今まで目を背けていたともいえます。
だから、いしかわゆきさんの話を聞いて「感情を深掘りし、やりたいことを自分から探す」という姿勢も必要だと気づきました。さらに、自分を知ろうとしなかった理由を考えてみたところ、14年前のフランス旅行がきっかけだと思い出したのです。
14年前にやめた「やりたいこと探し」が動き出した
14年前、私は友人夫婦が住むフランスへ行き、2週間旅行をしました。初めての個人旅行だったので、準備から新しい経験ばかり。
当時は「個人で2週間もフランスに行くのだから、自分のやりたい何かが見つかるのでは?」と期待する気持ちがありました。というのも、「ニューヨークで働くジャーナリストの女性が、自分探しの旅に出る」という内容の映画を観たことがあり、それに憧れていたからです。
フランス旅行は楽しめましたし、気持ちの変化もありましたが、「自分のやりたいこと」までは見つかりませんでした。そのためフランスから帰国した私は「自分のやりたいことなんて、結局みつからない」と結論づけてしまったのです。
それからは「自分のやりたいことを探すのではなく、目の前のことを一生懸命にやろう」と思うようになりました。
でも今回のイベントでいしかわゆきさんの話を聞いたとき「フランスを旅行した2週間、私はずっと受け身だった」と気がつきました。「旅先で見た景色や芸術品、出会った人との会話が、自分にひらめきを与えてくれるのでは?」と期待していたからです。
今思うとフランスで、美しい、楽しい、癒やされる、と感じたとき「自分の感情がどう動いたか?」を考える時間が必要だったと思います。
イベント会場から帰宅する電車の中、私は14年前のフランス旅行で「美しい」と感じた場面を深掘りしてみようと思いました。
モネの家と庭園を「美しい」と思ったのは、景色と裏方の信念だった
私がフランス旅行で最も「美しい」と感じた場所は、クロード・モネ(以下、モネ)の家と庭園です。
フランスの画家であるモネは、1883年にフランス北部のジヴェルニーに移り住み、理想の家と庭をつくりました。大掛かりな修復を経て、今は一般公開されています。
私がモネの家と庭園を訪れたのは5月だったので、チューリップやバラなど、庭園では春の花々が見頃を迎えていました。
池には白やピンクの睡蓮が咲き、太鼓橋や藤棚、バラのアーチなど、美しい景色が広がります。モネの見ていた景色が忠実に再現されているのは、奇跡だと感じました。
私は当時の感情を深掘りするため、2025年の今、改めてジヴェルニーについて調べることにしました。
1926年にモネが亡くなった後、モネの家と庭園は、家族から美術アカデミーに寄贈されます。雑草だらけの庭を修復し、当時の状態を再現するには、大変な苦労がありました。
完成図がどこにもない中、修復を手がけた人たちは、モネの絵を細部まで研究し、植物の種の注文記録まで確認したそう。修復が終わって一般公開されたのは、モネが亡くなった54年後の1980年です。
改めて調べてみると、「時間がかかっても、忠実に再現したい」という強い気持ちが伝わってきます。私がモネの庭で抱いた「美しい」という感情は、風景だけでなく、裏方の信念に対する感情でもあったのだと気がつきました。
「美しい」を深掘りして辿りついた感情は、今の仕事にも活きていた
私は今、コミュニティの運営スタッフやオンライン秘書など、裏方の仕事をたくさんしています。
コミュニティの運営スタッフを続けているのは、メンバーの皆さんがつくり上げた「温かい環境」を守りたいという感情があるからです。
これが私のやりたいことであり、やりがいを持って取り組めている理由だと思います。そしてこの感情は私の個性であり「モネの庭を支える人たち」の信念に似ていると感じます。
今回はイベントで聞いた「何がしたいのか分からない人は、自分を知らなさすぎる」という言葉をきっかけに、「美しい」という感情を深掘りしてみました。
そのお陰で、自分は裏方の仕事に誇りを持っているのだと気づけました。「信念を持ち続ければ、温かい環境を守れる」という自信にもつながったので、深掘りして良かったです。
これからは他の感情も深掘りして、14年前にやめた「やりたいこと探し」を再開しようと思っています。
さいごに
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筆者:大江かこ(@kakoworks1)
編集:中村昌弘(@freelance_naka)