今回お話を伺ったのは、ライター歴1年にして大手ビジネスメディアの編集者として活躍する ” しろさん” です。
驚くことに、編集経験も取材経験もほぼゼロの状態から採用を勝ち取ったのだそう。
応募時にはポートフォリオの提示もしなかったのだとか。しろさんは「自分を評価するのは他者。みずからラインを引かないことが大切です」と語ります。
今回は、しろさんがライターになった経緯から、大手メディアの編集者になるまでの道のりをたっぷりお聞きしました。
仕事が獲得できず悩んでいる人や、自分の市場価値に自信が持てない人はぜひご覧ください。聞き手は中村さんです。
目次
なぜ実績ゼロから大手メディアの編集者に!?

中村
よろしくお願いいたします。
しろさんは、今は大手ビジネスメディアの編集者もやっているんですよね。しかも編集経験も取材経験もほぼゼロの状態から。
しろさんは、今は大手ビジネスメディアの編集者もやっているんですよね。しかも編集経験も取材経験もほぼゼロの状態から。
はい。完全に未経験でした。募集要項には「編集経験歓迎」「取材経験歓迎」とあったのですが、どちらも私にはなくて。それでも「大好きなこのメディアで働きたい」という思いが強くて、応募しました。

しろさん

中村
応募文には何を書いたのですか?
応募文にそのメディアへの愛と熱意を書き連ねました。
編集未経験なのでダメ元でしたが、とにかく読んでもらわないと自分の想いが伝わることもないと思ったんです。
たくさんの応募があったと思いますが、異彩を放っていた自信があります(笑)。
編集未経験なのでダメ元でしたが、とにかく読んでもらわないと自分の想いが伝わることもないと思ったんです。
たくさんの応募があったと思いますが、異彩を放っていた自信があります(笑)。

しろさん

中村
ポートフォリオはどうしたのですか?
文章力を証明するものは何も出していないです。でも愛が伝わったのか書類選考に通って、面談に進みました。

しろさん

中村
面談ではどんな話をしたのでしょうか?
最初からダメ元だったので、よく見せようと思うこともなく自由に話しました。たとえば、「うちのメディアの改善点は何だと思う?」と聞かれ「広告が多すぎて記事に集中できません」と、率直な意見を伝えました。
きれいにまとめた答えではなく、ありのままを話したのが逆によかったのかもしれません。「おもしろいね。編集者に向いているよ」と言ってもらえて、そのまま採用が決まりました。
きれいにまとめた答えではなく、ありのままを話したのが逆によかったのかもしれません。「おもしろいね。編集者に向いているよ」と言ってもらえて、そのまま採用が決まりました。

しろさん

中村
面談では緊張しませんでしたか?
「受からないだろう」と思っていたので、あまり緊張はしませんでした。
それに、大好きなメディアの担当者と話せるだけで嬉しい! という気持ちのほうが強かったです。
それに、大好きなメディアの担当者と話せるだけで嬉しい! という気持ちのほうが強かったです。

しろさん
仕事獲得の秘訣は自分でラインをひかないこと

中村
なぜ編集未経験でも採用されたのでしょうか。
愛と熱意に期待してくださったのではないかと思います。正直、今も実力が伴っていないと感じる部分はありますが、チャンスをいただけたことに感謝しています。
ちなみに私は心意気を示すために、提示された面談の候補日程のなかで一番早い日を希望しました。こうした行動もよかったのかもしれません。
ちなみに私は心意気を示すために、提示された面談の候補日程のなかで一番早い日を希望しました。こうした行動もよかったのかもしれません。

しろさん

中村
熱意をくみ取ってくれる会社なんですね。
そうですね。あとは、みずからラインを引かずに応募したのもよかったと思います。昔の私だったら「自分には到底無理だろう」と思って、募集を見ても行動しなかったかもしれません。
今回の面談を通して「自分を評価するのは、自分ではなく他者なのだ」と強く実感しました。
運やタイミングの要素はありますが、動けばそのチャンスは増えると思っています。動かない限り、100%見つけてもらえませんから。
今回の面談を通して「自分を評価するのは、自分ではなく他者なのだ」と強く実感しました。
運やタイミングの要素はありますが、動けばそのチャンスは増えると思っています。動かない限り、100%見つけてもらえませんから。

しろさん

中村
たしかに。手数を増やすことは重要ですよね。
運は待っていれば訪れるものではなく、自分で増やすことができると感じています。
もちろん動いたからといって必ず変化があるわけではないですが、動かなければ何も起きません。動かないことのほうが、むしろ怖いと思います。仮に失敗して恥ずかしい思いをしても、相手は覚えていませんし。
もちろん動いたからといって必ず変化があるわけではないですが、動かなければ何も起きません。動かないことのほうが、むしろ怖いと思います。仮に失敗して恥ずかしい思いをしても、相手は覚えていませんし。

しろさん
編集者の仕事内容。会議は毎回緊張するけれど楽しい

中村
今、編集者としてどんな仕事をしているのですか。
書籍に関連する記事が多いです。

しろさん

中村
どんな著者さんにオファーするのですか?
オファーする基準は、自分がその本を読んで「もっと多くの人に知ってほしい!」と心が動いたかどうかです。
媒体の方向性や読者層も意識しますが、自分と考え方が合いそうな人を選ぶことが多いですね。
媒体の方向性や読者層も意識しますが、自分と考え方が合いそうな人を選ぶことが多いですね。

しろさん

中村
編集部に入ってみて、驚いたことはありますか?
元テレビ局の報道記者や、元大手新聞社の記者など、錚々たる経歴の方ばかりで圧倒されました。
企画会議では、そんな方々の前で企画を発表します。その場で「GO」か「NG」かの判断が出るので、毎回胃が痛いです(笑)。
自分はまだまだ学ぶことが多い立場ですが、その分吸収できる機会が豊富で、刺激的な環境だと感じています。
企画会議では、そんな方々の前で企画を発表します。その場で「GO」か「NG」かの判断が出るので、毎回胃が痛いです(笑)。
自分はまだまだ学ぶことが多い立場ですが、その分吸収できる機会が豊富で、刺激的な環境だと感じています。

しろさん

中村
でも、なんだか楽しそうですね(笑)。
大好きなメディアで、自分が興味のあるテーマを扱えるのは本当に楽しいです。
鋭い企画を出す編集者の方は、とにかく引き出しが多くて、どんなテーマでも即答できるんです。あれは本当にかっこいいなと思います。
鋭い企画を出す編集者の方は、とにかく引き出しが多くて、どんなテーマでも即答できるんです。あれは本当にかっこいいなと思います。

しろさん
夫婦でフリーランスに! 金融ジャンルで結果を出すも疲弊

中村
そもそもの話になるのですが、 新卒で公務員として働かれていたんですよね。
はい。新卒で市役所に入り、総務課で2年間勤務していました。地域の行事や広報紙の発行、補助金対応など、いわゆる“何でも屋”のような業務です。
ただ、組織で働くことが自分には合わないと感じていました。
ただ、組織で働くことが自分には合わないと感じていました。

しろさん

中村
どの辺りが合わないと?
週5日8時間働いても、その努力が成果に直結しない点ですね。
そんなモヤモヤをかかえた状態だったうえに、当時はコロナ禍で将来について考える機会が多くて。「このままでいいのかな」と悩んだ末、金融系の企業に転職しました。
だいぶ畑違いだったのですが、大学時代から独学で金融を勉強していて、独立するならこの分野がいいと考えたんです。勢いもあって金融系企業に転職し、1年ほど実務を学んでからFP(ファイナンシャルプランナー)として独立しました。
そんなモヤモヤをかかえた状態だったうえに、当時はコロナ禍で将来について考える機会が多くて。「このままでいいのかな」と悩んだ末、金融系の企業に転職しました。
だいぶ畑違いだったのですが、大学時代から独学で金融を勉強していて、独立するならこの分野がいいと考えたんです。勢いもあって金融系企業に転職し、1年ほど実務を学んでからFP(ファイナンシャルプランナー)として独立しました。

しろさん

中村
あっ最初はFPだったんですね! それからライターを始めたきっかけは?
パートナーが先にライターとして独立していたんです。彼はもともと商社で営業をしていましたが、私がFPとして独立したあとに会社を辞め、ライターとして活動を始めました。
最初は「ライターなんて稼げるの?」と半信半疑で見ていたんですが、彼が仕事を取っている姿を見て「自分もできるかもしれない」と思ったんです。
FPに加え、もうひとつ収入の軸がほしかったという気持ちもありましたね。
最初は「ライターなんて稼げるの?」と半信半疑で見ていたんですが、彼が仕事を取っている姿を見て「自分もできるかもしれない」と思ったんです。
FPに加え、もうひとつ収入の軸がほしかったという気持ちもありましたね。

しろさん

中村
それでライターを始めるわけですね。最初はどんな仕事を?
クラウドワークスで金融系案件を受け始めました。具体的には、YouTubeチャンネルの台本制作やコラム執筆などです。
文字単価は0.8円といい条件ではありませんでしたが、FPとの親和性が高く、知識や経験を活かせることが楽しかったですね。
文字単価は0.8円といい条件ではありませんでしたが、FPとの親和性が高く、知識や経験を活かせることが楽しかったですね。

しろさん

中村
未経験からいきなり仕事を受注して大変じゃなかったですか?
今振り返ると割に合っていないのですが、クライアントとの関係が良好だったんですよね。だからそれほど大変さは感じていなかったです。
それに「最初は実績作りが肝心」と思っていたので、単価は気にせず気合いを入れて取り組みました。その結果、YouTubeの台本制作に携わっていたクライアントのチャンネル登録者が10万人になり、人気動画は100万回再生を突破するまでに成長しました。
それに「最初は実績作りが肝心」と思っていたので、単価は気にせず気合いを入れて取り組みました。その結果、YouTubeの台本制作に携わっていたクライアントのチャンネル登録者が10万人になり、人気動画は100万回再生を突破するまでに成長しました。

しろさん

中村
順調そうですね。
いや、実はそうでもなくて。 途中から、ほぼ報酬の上乗せなしでディレクション業務も任されるようになったんです。
ライターへの仕事振りや原稿の修正対応など、連絡が一日中絶えず、次第に心身ともに疲弊しました。仕事がなくなる怖さよりも、心身を壊すことのほうが怖いと気づき、その案件はまるごと手放す決断をしました。
ライターへの仕事振りや原稿の修正対応など、連絡が一日中絶えず、次第に心身ともに疲弊しました。仕事がなくなる怖さよりも、心身を壊すことのほうが怖いと気づき、その案件はまるごと手放す決断をしました。

しろさん
先輩ライターに背中を押してもらい単価アップ

中村
ディレクション業務をやめた後はどんなお仕事をしていたんですか?
やめた瞬間にX(旧Twitter)経由でお声がけをいただきました。法律系メディアの記事執筆で、「金融ライターなのに法律?」と驚きましたが、書けるかどうかではなく「書きます」と即答したんです。調べながら書けばなんとかなるかなと思って。
この案件で一気に文字単価が3~4円になり、記名記事も増えました。その実績を武器に金融系の案件にも応募したところ、クラウドソーシング経由で高単価の案件を取れるようになったんです。
この案件で一気に文字単価が3~4円になり、記名記事も増えました。その実績を武器に金融系の案件にも応募したところ、クラウドソーシング経由で高単価の案件を取れるようになったんです。

しろさん

中村
最初の案件から5倍くらい単価が上がったんですね。
今思うと、もっと早い段階で単価を上げられたと思います。文字単価0.8円の案件を受けていたときの私は「初心者だからこの程度の単価でいいだろう」と勝手にラインを引いてしまっていたんです。
でも実際は、単価が5倍になっても求められるスキルや難易度が極端に変わるわけではないと気づきました。
この法律系案件がきっかけで、より高単価の案件にも自信を持って応募できるようになりましたね。
でも実際は、単価が5倍になっても求められるスキルや難易度が極端に変わるわけではないと気づきました。
この法律系案件がきっかけで、より高単価の案件にも自信を持って応募できるようになりましたね。

しろさん

中村
そこから外注化や案件の取捨選択につながったんですね。
はい。高単価案件を取れるようになったものの、当時は起きている時間のほとんどを執筆に費やしていて、完全に頭打ち状態。
なんとかその状況を打開しようとWebライターラボに入り、メンバーと1対1で会話できるサービス「ラボトーク」を利用しました。相談相手は、インタビューライターとして活躍し、法人化もしている藤原友亮さんです。
なんとかその状況を打開しようとWebライターラボに入り、メンバーと1対1で会話できるサービス「ラボトーク」を利用しました。相談相手は、インタビューライターとして活躍し、法人化もしている藤原友亮さんです。

しろさん
現状を相談したところ「外注化したら?」と背中を押していただきました。
ただ、うまく外注化できる自信がなかったので「品質が落ちて仕事が減るのが怖い」と言ったら「減ったらまた取ればいい」ときっぱり言われました。
ただ、うまく外注化できる自信がなかったので「品質が落ちて仕事が減るのが怖い」と言ったら「減ったらまた取ればいい」ときっぱり言われました。

しろさん

中村
それで行動に移したと。
はい。1週間後には一部業務を外注化して、納得できない低単価案件は断るようになりました。
お世話になっているクライアントさんとは関係を保ちつつ、時間を生み出せたことで、さらにやりたい案件に挑戦できる環境が整いました。
その後は、先ほど話したとおり大手ビジネスメディアの編集者に応募して今に至る、という流れです。
お世話になっているクライアントさんとは関係を保ちつつ、時間を生み出せたことで、さらにやりたい案件に挑戦できる環境が整いました。
その後は、先ほど話したとおり大手ビジネスメディアの編集者に応募して今に至る、という流れです。

しろさん
未経験から編集者になったしろさんが大事にしていること

中村
お話しを聞いていると、挑戦してきたことが今の結果につながっていますよね。
はい。編集者へ応募したことも、ラボトークで先輩に直接相談したことも勇気がいりましたが、思い切って挑戦してみたことで道が開けました。
「できるかどうか」ではなく、やってみる精神が大切なのだと思います。
「できるかどうか」ではなく、やってみる精神が大切なのだと思います。

しろさん

中村
挑戦するためにどんなマインドを大事にしていますか?
「自分には無理だろう」と決めつけないことですね。
「私は文字単価0.8円くらいだ」と思っていたら、文字単価5円の案件には挑戦すらできなかったはずです。自分を低く見積もらず、手をあげて行動したから今につながっています。
「私は文字単価0.8円くらいだ」と思っていたら、文字単価5円の案件には挑戦すらできなかったはずです。自分を低く見積もらず、手をあげて行動したから今につながっています。

しろさん
一方で、5円の案件を獲得したからといって「自分の力量は文字単価5円だ」と思い込むのも違うと思います。
単価や肩書はあくまで一つの指標でしかなく、価値を決めるのはクライアントや読者です。だからこそ、常に謙虚に学び続ける姿勢を持っていたいですね。
単価や肩書はあくまで一つの指標でしかなく、価値を決めるのはクライアントや読者です。だからこそ、常に謙虚に学び続ける姿勢を持っていたいですね。

しろさん

中村
今後はどんな方向を目指しているのでしょうか。
大きな夢は、いつか書籍を出すことです。
私は本が大好きで、年に100冊以上本を読むんです。まだ何を書くかは決まっていませんが、いつかそういう仕事ができたらいいなあと思います。
私は本が大好きで、年に100冊以上本を読むんです。まだ何を書くかは決まっていませんが、いつかそういう仕事ができたらいいなあと思います。

しろさん
編集者やライターとしては「AIに書けない文章」を生み出したいです。
私が携わっているメディアは、 一次情報をもとにした取材記事や、高度な専門性をもつ人の知見を深く掘り下げた記事が多いんです。
そういう記事は読んでいて面白いですし、自分の心が動くんですよね。AI時代の今だからこそ、1本で誰かの人生を動かせるような記事を作りたいですね。
私が携わっているメディアは、 一次情報をもとにした取材記事や、高度な専門性をもつ人の知見を深く掘り下げた記事が多いんです。
そういう記事は読んでいて面白いですし、自分の心が動くんですよね。AI時代の今だからこそ、1本で誰かの人生を動かせるような記事を作りたいですね。

しろさん

中村
しろさんの情熱が伝わってきました。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。

しろさん
さいごに
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