- 雑誌や新聞の仕事は、Web記事とどう違う?
- Webライターが紙媒体の仕事をはじめるには?
- Webライターだけど、ゆくゆくは出版社の仕事をしてみたい!
今回はこんなお悩みにお答えするために “ シモカワヒロコさん” (以下、シモカワさん)に話を伺いました。
シモカワさんは、新卒で商業誌の出版社に就職。その後独立されて、現在はライター兼編集者として活躍されています。
雑誌だけでなく書籍や新聞、Webなどさまざまな媒体で記事を手がけているシモカワさんに、紙媒体の仕事について教えていただきました。
現在Webライターの仕事をされている方は、仕事の幅を広げるヒントとしてシモカワさんのお話を参考にしてみてください。
出版社時代に鍛えられた「売れる雑誌をつくる考え方」とは?
媒体は特に固定せず、Webや雑誌、新聞、書籍など幅広く活動しています。
入社2年目は特集の制作統括になり、40ページ以上の内容決定から発売までの、ありとあらゆる仕事を担当しました。
それに加えて、毎月必達の売上目標があり「目標をクリアできるよう、売れる雑誌をつくること」と、口酸っぱく言われていました。
毎月のタスクをこなしつつ、なんとか試行錯誤して目標をクリアしていました。
忙しい時期は働きづめで大変でしたが、そこで鍛えられた経験が今に活きています。
というのも、読者が知っていることを雑誌に載せても、買ってもらえないんですよね。「お金を出してこの雑誌を読みたい」と思ってもらう必要があります。
たとえば、都市圏でUber Eatsをテーマにした企画を考えるのなら「Uber Eatsの使い方を紹介」は、スピードという観点ではいまいちです。都市圏に住む人なら、だいたいの人が既に知っていそうですからね。
先ほど挙げた例も、「この前Uber Eatsを使ったら変わったメニューがあったんだよ」という、何気ない友達の話がヒントになりました。
さらに、同じような例や正反対の例はないか、他のサービスと隠れた共通点はないかなど、ひとつのアイデアを色々な観点から広げていきます。
こうしたネタ探しのクセをつければ、おもしろい企画ができると思います。
さきほどは都市圏の例を挙げましたが、同じUber Eatsでもまだサービスが普及していない地方だと、使ったことのない人もたくさんいると考えられます。
雑誌づくりでは、他にどんなことを重視されるのですか?
「もっとこの商品に寄ってほしい」「隣のページに載る店とアングルが被らないように、こういう構図で撮ってほしい」のように、カメラマンさんにさまざまな指示をしていました。
取材現場での指示がしやすくなりましたし、カメラマンさんとの意思疎通もスムーズになって、良い写真が撮ってもらえることが増えたと思います。
他には、出版社にポートフォリオを送るのもありです。雑誌の編集者だったときに、フリーのライターさんから売り込みがきたこともありました。
当たり前ですが、フリーで仕事を受けることと、中の人として働くことには色々な違いがあります。
私自身、出版社で「1冊の雑誌をつくるすべてのプロセス」を経験したことが今に活きているので、そうした選択肢を考えてもいいのではないでしょうか。
実は高い文章力は求められない!? 新聞の仕事で大切なこと
取捨選択については、取材で聞いた情報のうち、何を選び取って伝えるかが大事、ということです。
たとえば、取材中に盛り上がった話題や興味深いお話があっても、伝えたいことでなければバッサリ切り捨てることもあります。
1.5時間ぐらいの音源を700~1200字ぐらいに凝縮するので、使う箇所の方が少ないぐらいです。
たとえば何かの先進事例を紹介するのなら、その事例の概要や特徴を先に記載して、それが実現した理由や背景を述べて、関係者のコメントを載せる、というイメージです。
私は普段、外構やエクステリア専門のブロガーの方とも仕事をしていて、その実績をアピールして応募したら採用になったんです。
でも、私が応募した仕事も「業界未経験者お断り」ではなかったので、誰にでもチャンスはあると思います。
Indeedでは、新聞社や出版社の案件をときどき見かけるんですよ。紙媒体の仕事に興味がある方は、チェックしてみるといいかもしれません。
一番大変だったのは雑誌づくり。誤字脱字にまつわる苦い思い出
大型連休がある月はさらに締切がタイトで、なかなかハードでした(笑)。
でも雑誌では、発売後に誤字脱字を発見しても直せません。一度ミスしたら、永久に誤字脱字のある誌面が残ります。
媒体の信頼も落としますし、お店や商品の情報が誤った状態で広まってしまうので、あってはならない事態なんです。
今でも制作に携わった雑誌が届くと「誤字脱字があるのではないか」とドキドキしてしまい、誌面を直視できません。
記事の種類を問わず、情報が早く、広く届きますよね。無料の媒体だと読者の数も多いです。ふとしたことで炎上するリスクがあるので、言い回しにはとても気を遣います。
特にタイアップ記事※が炎上すると、クライアントが批判される可能性もあります。
特定の人に嫌な気持ちを抱かせないよう、攻めすぎず、でもきちんとサービスを訴求できるような表現の落としどころを探るのに時間がかかりますね。
※タイアップ記事:企業(広告主)が媒体(メディア)と協力して出す広告記事
多様な媒体の仕事に挑戦するなかで共通する軸は?
極端な話、契約や販売1件あたりの利益が数百円ぐらいの「薄利多売」な業界と、1件あたり数百万円の利益率が高い業界なら、広告の予算額は後者の方が大きそうじゃないですか。
そんな感じで、予算に余裕がある業界であれば編集者やライターに支払えるお金も増えるので、単価が高くなりやすいのではないかと推測しています。
たとえば、最近は電子工作に関する記事を書いています。はんだごてやニッパーのような工具と、電子部品を使ってものづくりをする、というテーマの連載コラムです。
そうしたジャンルを強みにすれば、仕事依頼をいただきやすそう……という狙いもありますね。
雑誌の編集者も、幅広い情報を集約する業務だったので、性に合っていたのかもしれません。
今もさまざまな仕事を手掛けていますが、どれも本当に楽しいですね。
それに、私は飽き性なので、色々な媒体の仕事をするほうが楽しいんです。
「書くのに疲れたら編集」「とりあえず書く気分になるまでゆっくり文字起こしをしよう」など、作業する順番をフレキシブルに決められる点も気に入っています。
雑誌や新聞、Web、書籍と多媒体で書く! マルチタスクのコツ
たとえば、「A社のWeb記事の制作」を分解すると、リサーチ、構成作成、執筆、画像選定と分けられます。「クライアントに請求書を出す作業」も、B社は月末までにメールで送付、C社は翌月の5日までにChatworkで提出……のように細分化できますよね。
そうすると、仕事の内容がバラバラでもスムーズに進めやすくなりますし、進捗も分かりやすくなるので焦らず対応できるんです。
私は、日中よりも夜のほうが仕事がはかどるタイプです。だから夜に重めのタスクを持ってきて、明るい時間は軽めのタスクを中心にしています。
良いパフォーマンスを発揮することを最優先にして、それ以外のことは潔く捨て去っています。
原稿執筆で使うツールも、私が関わった限りでは紙媒体ではWordを使うことが多く、Web媒体ではGoogleドキュメントがメイン……といった違いがありました。
本質をはき違えなければ、どんな媒体でも仕事はできるはずです!
さいごに
ライター向けオンラインコミュニティ「Webライターラボ」では、 ”シモカワさん” をはじめ、さまざまなジャンルで活躍するライターが集まっています。
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ゲスト:シモカワヒロコ(@nyima_smkwhrk)
ライター:ゆらり(@yurarigurashi)