ドラマや漫画好きのライターは必見！　シナリオライターって何？どうすればなれるの？

簡単に言うと台本を書く仕事です。
シナリオライターと一口に言っても、ゲームシナリオ、漫画の原作、動画の台本などさまざまな制作物があります。
私はそのなかでも、YouTube動画のシナリオを書く仕事をしています。

「動画」というと、YouTuberが「今日はこんなお店に来ました！」とリポーターのように話している姿をイメージするかもしれません。そうした動画の多くは配信者がアドリブで話しており、シナリオライターは入っていません。

私が携わっているのは、本や映画などの作品を解説する動画や、ストーリーにそって進む漫画動画の台本です。

ストーリー系のシナリオ制作の場合は、まずはクライアントからテーマをもらいます。
たとえば、「夫婦仲が悪くて、耐えかねた妻が家を出てしまう」のようなテーマです。

それにそってプロット（物語の構想）を考えて、一旦クライアントに提出するんです。その内容でOKが出たら、シナリオに起こす段階に入ります。
シナリオを書くときは、シチュエーションや登場人物のセリフ、場面の切り替わりなど、動画の骨子になる部分をシナリオに落とし込みます。

日々の出来事や昔の体験からアイデアを考えます。私がつくるシナリオは、育児や家族関係のような日常生活に根ざしたテーマが多いので、自分が共感できることをネタにしています。
たとえば、夫婦間のすれ違いについて書くのなら、こんなイメージです。

“ お母さんはバリバリ育児と家事をこなしているけれど、お父さんはリビングでゴロンとしている。でもお父さんは他の人に対して「俺はめちゃくちゃ育児してるんだよ。おむつ交換もしてるしね」と言う。”

こんなストーリーだったら、私自身が「そういう状況ってあるよね……。お母さんの立場だったらモヤモヤするよね」と思いますし、続きが気になってしまいます。

リアリティです。
漫画動画に限った話ではありませんが、作り物っぽくなってしまうと、途端に話がつまらなくなる気がするんですよね。「つまらないな」と思われたら、視聴者は一瞬で離脱してしまいます。

だから、シナリオをつくるときは「この内容はリアリティがあるか？」を常に考えています。
たとえば「今日もよく寝たなぁ。今日のご飯なんだろう？」という主人公のセリフがあったとします。でも、実生活ならそんなこと声に出して言いませんよね。頭のなかで考えるだけです。
このように、実生活でも言わないようなセリフは思い切ってカットします。

没入感につながるからです。ドラマや漫画でも、視聴者が登場人物に感情移入するから没入感が生まれるのだと思います。

他人に不満があったとしても、相手にはっきりと意見を言える人はあまりいないですよね。
でも、ドラマの登場人物がスカッとするセリフを言っていたら「かっこいいな！もっと続きを見たいな」と思うのではないでしょうか。

そういった気持ちが視聴を続ける動機になると思うので、感情移入したくなるようなシナリオをつくりたいですね。

他の人の体験談をリサーチします。たとえば、「大きな事件を起こした犯人の葛藤」のようなテーマをいただくことがあります。
もちろん私は体験したことがないので、犯人の気持ちを予想するのは難しいです。
でも、個人ブログやニュースなどを調べると、誰かしらが事件の考察をしています。

犯人が何に困っていたのか。どんな心理で事件を起こしてしまったのか。こういった内容は、リサーチすればある程度予測できます。

嬉しいことや悲しいこと、辛いこと。どんな出来事にも人間の感情がついてまわります。
そんな心の動きをどれだけ鮮明に伝えられるかが、シナリオライティングでは鍵になるかなと思います。

ライターになったばかりのときは、クラウドソーシングで受注したSEO記事を書いていたんです。ただ、なかなか単価が上がらなくて「SEO記事の執筆は向いていないのかも」と思っていました。

そんなときにYouTubeシナリオの案件を見つけて、「おもしろそうだからやってみたい！」と思いチャレンジしました。

すると、たまたまなのですが、納品したシナリオの動画が一晩で70万回再生されたんです。もちろん私のシナリオだけの力ではないのですが、それで自信がついて、今も続けられているという状況です。

本格的なものではなく、学生時代に演劇部に所属していた程度です。
先輩と合作で書いた台本が予想以上に評価されて、県大会で上演されて、たくさんの人が鑑賞してくれました。
そのときに「こんな台本をつくれば喜んでもらえるんだ」というのがなんとなくわかったんです。その経験はシナリオ制作に活きている気がします。

ただ、演劇や台本をつくった経験がなかったとしても、シナリオをつくることはできます。
一般的な台本には、登場人物の名前とセリフが書いてありますよね。そのような様式がわかっていれば、未経験でも大丈夫です。

クラウドソーシングにあるような初心者向けの案件だと、文字単価１円に満たないものが多いです。最初はそのくらいからはじめて、経験を積めば文字単価２円くらいは目指せると思います。

正直、シナリオライティングはそこまで単価が高いわけではありません。そもそも１本の動画をつくるのに莫大なコストがかかります。
シナリオライティングは全体のごく一部の工程なので、単価が安いのは仕方ないかなと思っています。

完成動画の尺（分数）から逆算して文字数を決めるので、ボリュームはさまざまです。
たとえば、10分前後の動画の場合は6,000文字くらいが一般的です。
８分以上の動画だとYouTubeでの広告条件がよくなるので、そのくらいの尺を好むクライアントもいます。

クライアントの意向によりますが、そういった案件もあるようです。私が書いたシナリオで一番再生されたものは700万回を超えているんです。ボーナスをもらったことはないのですが、あったら嬉しいだろうなぁとは思いますね（笑）

私はチームをつくってディレクションしたこともあります。
他のライターさんに仕事を割り振ってシナリオを書いてもらって、上がってきたらチェックして修正して……と、流れは他の案件と同じです。

ただ、ディレクターが直すポイントは他の記事とは少し違いますね。視聴者が没入できるように内容を整えるのが、シナリオのディレクションでは重要かなと思っています。

日本語の間違いを指摘するようなことはそこまでなく、没入感が出せるのならあえて間違いを残すこともあります。おバカなキャラクターのセリフなら、日本語がおかしいこともありますからね。
私がディレクターだったときは「ストーリーが成立しているか」と「続きが気になるか」を重点的にチェックしていました。

もちろんなれますよ。ただし、向き不向きはあります。ストーリーを書くシナリオライティングの場合は、物語をつくらなくてはいけないので、ドラマや小説、漫画などの作品が好きな人なら取り組みやすいと思います。

たとえば、漫画を読みながら「この登場人物はこんなことを考えていたんじゃないか？　もしそうだとしたら、次のシーンはこうなるのでは？」のように、脳内で妄想を始めるタイプの人にはおすすめです（笑）

あとは、「脳内で完成形をイメージする力」も必須だと思います。シナリオを書くときに映像もセットでイメージしておかないと、話の流れがあべこべになってしまうからです。
セリフだけでなく、登場人物の動きや周りの状況、シーンの切り替わりなども気を付ける必要がありますね。

こうした話を聞くと難しく感じられるかもしれませんが、向いている人ならわりとスラスラできると思います。

自分の書いたシナリオに映像や音声が加えられて、動画としてYouTubeにアップされることです。

シナリオライターがつくる「台本」は、作品の原形でしかありません。映像や音声がついて、はじめて完成形になるので、そこがこの仕事の醍醐味であると同時に、何よりのご褒美でもあります。

シナリオライター以外の仕事にも言えますが、サンプル記事をつくることが大事です。もし自分が初心者だったら、1,000～2,000文字くらいの短編シナリオを１本書いて、営業時に提示できるようにすると思います。
ネットで調べればテンプレートが見つかるので、書き方のイメージをつかめますよ。

最初はクラウドソーシングを使うといいと思います。最初から直接契約するのは初心者のかたにはハードルが高いと思うので、まずは初心者向けの案件に挑戦して経験を積むのがおすすめです。

ちなみに、この業界はかなり狭いので、知り合いが増えれば仕事の依頼をいただける可能性は上がります。

私は昔Ｘ（旧Twitter）を営業ツールとして使っていました。仕事相手になりそうな人をどんどんフォローして、チャンスがあれば「シナリオ書けます！」とアピールしていました。

そうした活動を続けた結果、今は営業しなくても伝手で新規依頼をいただける状況になっています。
SNSを使って仕事関係者と関係を増やしていくアプローチもおすすめです。

長尺の脚本を書いてみたいですね。

たとえば、私のような動画の台本をつくるシナリオライターにとっては、Webtoon※で漫画の原作をつくることも選択肢になります。
人気作品になれば、アニメや映画、ドラマになる可能性もゼロではないんですよ。

今はNetflixやAbema TVでもオリジナル作品が増えていますよね。そうした動きも、長尺の台本を書いてみたいと思ったきっかけの一つです。

シナリオライターは向き不向きがありますが、向いていればストーリーがどんどん思い浮かぶので、とても楽しめると思います。
自分でつくったストーリーが動画になるのは、とてつもない達成感があります。
もしそんな経験をしたい人がいらっしゃったら、足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

ありがとうございました。